部下を育てる、組織全体のマネジメントに効果的なツールとして「コーチング」に注目する企業が増えてきています。
その一方で、ティーチングとコーチングを混同してしまい、適切な使い分けが出来ずに効果が上がらないと嘆くビジネスパーソンが少なくありません。
そこで今回は、コーチングとティーチングの相違点とそれぞれの特徴や適切な使いどころを解説します。
人材育成や部下の育成で悩む経営者やビジネスパーソンの方は、是非この機会に正しいコーチングとティーチングの理解を深めて、仕事に役立ててみてください。
教えるのがティーチングで、質問するのがコーチング…だよね?
コーチングとティーチングの違いとは
コーチングとティーチングは、似ているようで根本的な部分には大きな違いがあります。
両者の違いを簡単に説明すると、
コーチング=対象を支持して能力向上へと“導く”
ティーチング=対象に指示して能力向上のための知識やスキルを“教える”
教える側が主体となるティーチングと、逆にクライアント側(コーチングを受ける人)が主体となるコーチングは、その運用方法やメリット・デメリットが必然的に変わってきます。
「最終的に何を目的として行うのか?」も違うため、どちらが優れているという訳ではなく、適切な運用方法で正しく使い分けることが非常に大切なのです。
コーチングとティーチング、それぞれの特性やメリット・デメリットを深く理解して、正しく使い分けることこそが、組織運営や人材育成を効果的に行うカギとなります。
コーチング的なアプローチとは
少し極端な例ですが、より理解を深めるために、上記の画像を見てみましょう。
指示型の教育と、コーチング的アプローチが全く異なるものであることが分かると思います。
「なかなかモチベーションが上がらなくて…。」
「予算は詰められるが、進め方がわからなくて…。」
そういった方に「今からすぐ行動しなさい!」と“指示”をすれば途端に前へ進み始めるでしょうか?
そんなことはありませんね。
テーマが抽象的かつ自発的な行動が求められる内容であればあるほど、質問などの対話を通じて目標を明確にしていき、今、何を行動すべきなのか、共に考えていく必要があるのです。
すなわち、接し方において、コーチングとティーチングは全く異なるものであると言えます。
(どちらの方が優れているということではありません。)
・抽象的なテーマや自発的な行動が求められる場合、単なる指示よりも対話を通じたコーチングの方が効果的です。
コーチングとは
コーチングではマンツーマンで行う会話を通して、クライアント自身の新しい発見や気付きを促すことを目的としています。
コーチの役割は、コーチング対象の話にしっかりと耳を傾け(傾聴)、相手の気付きを促すための効果的な問いかけを行い(質問)、肯定的な姿勢で認めてあげること(評価)です。
コーチングでは、あくまでも主体となるのはコーチではなくクライアントであり、上司と部下という関係性のままではなく、「良き理解者」という立場で寄り添いながら育てる姿勢が大切になってきます。
▼実際のコーチング的な会話例はコチラ。(動画では、GROWモデルという会話の型を使っています。)
・コーチは、傾聴や効果的な質問、肯定的な評価を通じて、クライアントの気付きや成長をサポートする役割を果たします。
コーチングのメリット
コーチングを人材育成に用いる最大のメリットは、自主性やアイデアに溢れる人材を得られるという点にあります。
いわゆる「指示待ち人間」ではなく、問題点を自主的に考えた上で何をすれば良いか?を考えた行動や意見を出してくれる人材は組織にとって大きな財産です。
また、組織内における人間関係を円滑にするという効果もコーチングにはあります。
単純に上司と部下という関係性ではなく、チームとして互いにリスペクトし合う人間関係の構築は、組織全体のモチベーションや雰囲気を上げることに繋がるのです。
・コーチングは、組織内の人間関係を円滑にし、チームとして互いにリスペクトし合う関係性を構築する効果があります。
コーチングのデメリット
コーチング自体にデメリットはありませんが、効果が出るまで時間がかかる点には気を付けなければなりません。
コーチングではクライアント自身の気付きや考え方の変化を待つことになるため、1~2回セッションをしただけでは効果が得られないことはザラです。
しっかりと腰を据えて、育成したい人材との対話を根気強く行うことで効果が見えてくるものなので、スピード感が求められる状況には適していないので注意しましょう。
ティーチングとは
ティーチングはコーチングとは逆で「コーチが主体となり」、技術や知識など明確な答えを相手に教えることを意味しています。
スポーツなどで耳にするコーチの役割はまさにティーチングで、正しいスキルや知識・理論をコーチが保持し、それを的確に伝えることで成長を促すことがティーチングの役割です。
一般的にコーチと言えばこうしたイメージが先行しがちなことも、ティーチングとコーチングを混同してしまう原因になっているのかもしれません。
企業におけるOJT(オンザジョブトレーニング)や、普段から行っている指示や命令などもいわばティーチングの一環ということになります。
・企業のOJTや普段の指示や命令もティーチングの一環であり、ティーチングとコーチングの混同は一般的な「コーチ」のイメージが原因であることが多いです。
ティーチングのメリット
ティーチング最大のメリットは、スピード感です。
教える側が明確な答えや方法を知っていて、それを伝えて実行させるという流れになるため、短時間で成果が望める点は大きなメリットとなります。
具体的な問題点に対する解決策や、仕事効率を上げるための方法など、ティーチングの場合は目的と結果が具体的で判りやすい点もメリットです。
ティーチングのデメリット
コーチングに比べて、ティーチングにはデメリットが比較的多いので、適切な効果を得られずに悩む企業は多いものです。
まず最も大きなデメリットは、コーチ(教える側)の能力に効果が依存するという点です。
指導力があり、知識やスキルが確かな人材がティーチングを行えば大きな成果が生まれますが、教え方が下手だったり本人の能力が低いと望む効果が得られないことも。
また、クライアント側が常に受け身となるため、自主性が伸びにくく「指示待ち人間」が増えてしまうというリスクもあります。
教える・命令するという図式から、反発や反感を買ってしまい人間関係が悪くなることもあるので教える側の姿勢にも気を付けなければなりません。
コーチングとティーチングをどう使い分ければよいか
コーチングとティーチングを適切に使い分けることが、組織運営や人材育成を成功させる重要な要素だと冒頭でも触れましたが、厳密に言うと使い分けと組み合わせが重要です。
例えば、
A.命令が無ければ全く機能しない指示待ち人間
B.勝手な判断で自主的に行動や決断をしてしまう人
上司や経営者の立場からすれば、A・Bどちらも理想的な部下とは言い難いはずです。
自主的に考え、企業の目標や自分の立場をしっかりと理解した上で正しい判断を下して行動できる人、つまりは自立した人材を育成するためには「プロセス」が大事です。
新入社員や仕事の理解度が低い人には、ティーチングで基礎的な部分をしっかりと教えることから始めるべきでしょう。
成長の度合いを見極めながら、徐々に出来る仕事の範囲や知見を広げていく段階では一方的な命令だけでなく、相手の意見も聞きながらコーチングのスキルも組み合わせていきます。
仕事の理解度が高くなり、自主的な行動やアイデアを生み出す人材へと育って欲しいと考えるようになってくると、本格的にコーチングを行うことで大きな成長へ繋がります。
このように段階的にティーチングとコーチングを使い分けながら、組織全体の能力を引き上げていく運用方法こそがビジネスコーチングなのです。
また、管理職や経営者がコーチングを深く理解しておくことは人間関係の構築に大きな影響を与えます。
傾聴・質問・評価というコーチングの基本スキルを普段から意識的に使うと、ティーチングでも高圧的な態度や命令口調ではなく、人間関係を良好に保ちながら効率良く物事を教えることができるようになります。
コーチング・ティーチングの両方を正しく理解し、状況に応じて使い分けたり組み合わせたりしながら能動的な組織づくりに役立ててみてください。
・新入社員にはティーチングで基礎を教え、成長に応じてコーチングを取り入れ、自立した人材を育成することが重要。
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