コーチングの基本スキルは、コーチを目指す人だけでなく一般企業に勤めるビジネスマンにとっても非常に有用な効果をもたらしてくれます。
この記事ではコーチングの基本スキルを徹底的に解説します。
基本のスキルですが実用性は非常に高く、実践することで確かな手応えを感じられるはずなので、是非この機会に理解を深めて役立ててみてください。
「ココだけ抑えておけ」的なスキルですね!
コーチングの基本スキルとは
コーチングにおける基本スキルとは、「聴く」「質問する」「伝える」という3つです。
相手の話をよく聴き、適切な質問を投げかけ、相手に正しく伝えることは、コミュニケーション能力が高いビジネスマンなら普段から無意識に行っているかもしれません。
部下や同僚から「信頼できる人」や「相談しやすい人」と評される方は、自然とコーチングの基本スキルに近いことができているケースがほとんどです。
コーチングの基本スキルを深く理解することは、コーチを目指す上ではもちろんですが、円滑なコミュニケーションにも役立ちます。
それぞれのスキルについて詳しくみていきましょう。
聴くスキル
コーチングの基本スキル「聴く」とは、相手の話をしっかりと理解することを指します。
ただ音を聞くのではなく、相手の話に耳を傾け、興味と理解を持って真剣に「聴く」ことが重要です。
これが「聴く」という言葉の本来の意味です。
コーチングはマンツーマンの対話形式で行われるため、「聴く」ことがしやすい環境と言えます。
普段から聴くことを意識するだけでも、「意見に向き合ってくれる人」と相手に思われ、信頼や話しやすい人間関係の構築に役立ちます。
コーチングとは、一方的に知識やスキルを教えるティーチングとは異なり、相手から問題点と具体的な解決策を”引き出す”ことが目的です。
しっかりとクライアントの意見や考えを引き出す上で、聴くスキルは基本中の基本となるので、普段の会話から意識してみましょう。
・「聴く」とは、相手の話をしっかりと理解し、興味を持って真剣に耳を傾けることを指す
・コーチングは、相手から問題点や具体的な解決策を引き出すことを目的としており、信頼や話しやすい人間関係の構築に役立つ「聴く」スキルが重要
6つの「聴く」技術
聴く技術は、大きく分けて以下の6つです。
- 相槌やうなずき
- ペーシング
- リフレイン(おうむ返し)
- 沈黙する
- 要約する
- 正対しない
▼6つの聴く技術を実際に使っている様子は以下を参照ください。
①相槌やうなずき
適切なタイミングでの相槌や頷きは、相手に「話を聞いています」というメッセージを伝える重要な技術です。
これにより、話し手は安心感を持ち、信頼関係が深まります。
・信頼関係の構築につながる
・コーチングでは、クライアントに「しっかりと聴いている」という印象を与えられる
視覚的合図:頷きは視覚的にも「聞いています」というサインを送るため、特に慎重な話ではゆっくりとした動作が効果的
②ペーシング
ペーシングは、相手と「ペースを合わせる」技術です。
相手の話しやすさを向上させるために、いくつかの要素でペースを合わせることが重要です。
・深い信頼関係を築くことができる
・クライアントに「しっかりと話を聴いている」という印象を与えられる
声のトーン:相手の声のトーンに調和させる
言葉遣い:方言やよく使うワードに配慮する
間の取り方:適切な間を持つ
視線:視線のタイミングを合わせる
呼吸:呼吸のリズムを揃える
③リフレイン(おうむ返し)
リフレイン(おうむ返し)は、相手と同じ言葉やキーワードを繰り返す技術で、スムーズなコミュニケーションにおいて重要です。
ただし、リフレインだけでは違和感を与えることもあるため、質問とセットで行うことが重要です。
・質問を組み合わせることで、会話をスムーズに進行できる
リフレインと質問をセットで行う:ただ繰り返すだけでなく、次の会話につながる質問を加える
注意点:リフレインだけでは、相手に不安や違和感を与える可能性があるため、注意して使用する
④沈黙する
沈黙することは、相手が考える時間を大切にするための技術です。
相手が思考している間に余計な言葉を挟まず、思考の邪魔をしないことが求められます。
これにより、クライアントは質問に対してじっくりと考えることができます。
沈黙を恐れない:沈黙が続くことに不安を抱かず、クライアントのペースに合わせる
クライアント第一主義:クライアントの考えを尊重し、彼らが自分の答えを導き出すのを待つ
承認のマインド:クライアントのプロセスを承認し、彼らのペースに寄り添う
⑤要約する
要約することは、クライアントの話を適切にまとめたり、言い換えたりする技術です。
これにより、クライアントの言いたいことを確認し、脳内の整理を手助けします。
・「話を聴いている」というパフォーマンスとして機能し、クライアントに安心感を与えられる
脳内の整理:クライアントの話を要約することで、彼らの考えを整理しやすくする
確認と質問:理解が不十分な部分は、クライアントに質問して確認する
⑥正対しない
正対しないことは、コーチングの現場でクライアントに圧迫感を与えず、リラックスした状態で話を聴くための技術です。
斜めの位置に座ることで、相手に安心感を与え、話しやすい雰囲気を作ります。
一般的に、人と話す時は図のように正対する形で座るでしょう。
コーチングの現場では、正面ではなく斜めの位置など、向き合わないようにして座ります。
話しやすい雰囲気を作る上で、体の位置関係は大切な要素になります。
正対は無意識のうちに、相手に対して圧迫感を与え、少しづつ相手を緊張状態にしてしまいます。
正対とは本来議論をする時。ディベートを基に論破する相手の座る位置です。
対立関係にあるようなイメージを潜在的に感じさせてしまいます。
この緊張状態があると、クライアントは自身の考えを発しづらくなってしまいます。
正対を避けることで、クライアントが話しやすい雰囲気を作っていきましょう。
・クライアントに安心感を与え、信頼関係を築くことができる
・クライアントが自身の考えを発しやすい環境を整えることができる
パーソナルスペースに配慮:相手の快適な距離を考慮し、適切な位置を選ぶ
質問するスキル
コーチングで相手が抱える問題点や解決方法を引き出すためには、聴くだけでは不十分な場合がほとんどです。
本人も気付いていない問題や答えを引き出すために用いるのが、質問するスキルです。
コーチングの基本スキルとなる「質問する」は、一般的な質問とは異なり、「何をどのように質問するか」が重要です。
・コーチは、傾聴や効果的な質問、肯定的な評価を通じて、クライアントの気付きや成長をサポートする役割を果たす
5つの「質問する」技術
質問する技術は、大きく分けて以下の5つです。
- オープン・クエスチョン / クローズド・クエスチョン
- 5W1H
- チャンクアップ(抽象化) / チャングダウン(具体化)
- 視点を変える(ifクエスチョン)
- 水平質問
▼5つの質問する技術を実際に使っている様子は、以下を参照ください。
①オープン・クエスチョン / クローズド・クエスチョン
オープン・クエスチョンとクローズド・クエスチョンは、質問の形式により相手の回答を導くための技術です。
オープン・クエスチョンは、相手に考えを深めさせ、広がりのある回答を促す質問であり、クローズド・クエスチョンは、具体的な情報や確認を求めるための質問です。
「あなたの人生の目的は何ですか?」
「今後どのようにキャリアを築きたいですか?」
といったイエス or ノーで答えられない質問が、オープンクエスチョンです。
「このプロジェクトに参加しますか?」
「この週末は空いていますか?」
といったイエス or ノーで答えられる質問が、クローズドクエスチョンです。
沈黙を恐れない:オープン・クエスチョンではクライアントが考える時間を大切にし、答えを急がない
②5W1H
5W1Hは、「What(何が)」「Who(誰が)」「When(いつ)」「Where(どこで)」「Why(なぜ、どうして)」「How(どのように)」の頭文字を取った言葉です。
この技術を用いることで、多角的な質問が可能になり、クライアントの思考を深めたり、状況を整理したりするのに役立ちます。
◆相手の考えを深堀りしたい時
Why:「なぜ、そのように考えたのですか?」
What:「その背景にあるものはなんですか?」
クライアントの価値観や信条を明らかにし、気づきを促すために使用します。
◆状況を確認したい時
Who:「誰がそのように言ったのですか?」
When:「いつ、そのようなことがあったんですか?」
Where:「どこで、そのようなことがあったんですか?」
クライアントの状況確認や思い込みを外す際に使用します。
◆実現方法を考える時
How:「どうやって、それを実現させましょうか?」
クライアントの目標達成の手段を洗い出すために使用します。
◆目標へのコミットメントを高める時
When, Where:「いつ、どこで、その行動をしましょうか?」
行動を明確に宣言してもらい、目標や行動へのコミットメントを高めるために使用します。
・状況や思考の背景を明確にし、現状を正確に把握できる
・目標達成に向けた行動を具体化し、コミットメントを強化できる
③チャンクアップ(抽象化)、チャングダウン(具体化)
チャンクアップ(抽象化)とチャンクダウン(具体化)は、話題の抽象度を調整する技術です。
大きな目標や価値観から具体的な行動までを整理し、クライアントの思考を導くために用いられます。
コーチングの現場では、「人生の価値観」などの抽象度の高い話題をチャンク(塊)が大きい話題、「今日何時に、何を食べるか」といった具体性の高い話題をチャンク(塊)が小さい話題、と表現します。
今、あなたが思い描いているものが「フルーツ」であったとしましょう。
チャンクアップ、つまり抽象化するのであれば、それは「食べ物」です。
チャンクで言えば、チャンクの大きい話題に移っています。
抽象度が高まっているのが分かりますね。
逆に、チャンクダウン。
具体化の方向であれば「りんご」や「ぶどう」などが該当するでしょう。
これはチャンクが小さくなっています。より具体に近づいているわけですね。
コーチは、話題の塊(チャンク)を大きくしたり、小さくしたりしながら、会話を進めていくことで具体的な行動を促します。
テスト勉強などにも近い考え方があるかもしれません。
●1ヶ月後のテストで100点を取る
↓↓↓ ★チャンクダウン
●2週間後には自己テストで90点を取る。
↓↓↓ ★チャンクダウン
●1週間後には教材をすべて読み終わる
↓↓↓ ★チャンクダウン
●明日には教材を買う
↓↓↓ ★チャンクダウン
●今日は方針をノートに記す
上記例は、抽象⇔具体とは若干ニュアンスが異なりますが、大目標から小目標につなげていくような思考プロセスとほとんど同一です。
・クライアントの思考を整理し、実行可能なステップを作成できる
・大目標を具体的な小目標に分解することで、目標達成への道筋を明確にできる
④視点を変える(ifクエスチョン)
視点を変える(ifクエスチョン)とは、「もしも、○○だったら」という問いを投げかけることで、クライアントの発想を広げ、新しい視点や気づきを引き出す質問技術です。
この方法は、固定された思考を解放し、アイデアが停滞しているときに非常に効果的です。
◆発想が停滞している時
「もし、あなたが大好きな◯◯というキャラクターだったら、どう行動しますか?」
「尊敬する◯◯さんなら、この状況をどう解決すると思いますか?」
◆目標達成のための行動を考える時
「もし、5年後のあなたが今の自分にアドバイスをするとしたら、何を言いますか?」
・異なる視点からの問いかけによって、目標達成に必要な具体的な行動案を導き出せる
・自分の思考や行動パターンを見直すきっかけとなり、自己理解を深められる
⑤水平質問
水平質問は、クライアントの回答をより深く引き出し、新たな気づきを促す質問技術です。
1つの質問に対して複数の回答を求めることで、クライアントの思考を広げ、普段考えないアイデアや視点を発見させます。
◆将来の目標を探る時
コーチ「将来、必ず実現したいことはありますか?」
クライアント「●●のような人になりたい…!」
コーチ「他にはどうですか?」
コーチ「さらに実現したいことはありますか?」
◆問題解決のアイデアを広げる時
コーチ「この問題に対する解決策は何ですか?」
クライアント「〇〇を試したいと思います。」
コーチ「他にも試してみたい方法はありますか?」
コーチ「さらに考えられる解決策は?」
・思考が深まり、目標や課題に対する理解が広がる
・より多くの選択肢や行動案が考えられるようになり、柔軟な対応が可能になる
思考を活性化する:新たな視点やアイデアを考えさせることで、普段気づかないことに対する気づきを得る
普段の思考を超える:水平質問は、普段考えていることを超えた新たな可能性を探るために使われる
伝えるスキル
コーチは、表情や声などから気づきを促すフィードバックを行います。
伝える内容は、コーチがクライアントと話をしながら、感じたことや見えたことなどです。
例えば、クライアントの表情が浮かなかったり、声に元気がなかったりする時があります。
ただ、クライアント自身は自分がそのような表情や声になっていることへ気づいていません。
コーチは、その状態を率直に伝えることで、クライアントに“気づき”を促すのです。
みなさんも、
「●●さん、今日はもしかして元気ないですか?なんだか疲れているように見えます…。」
などと友人や会社の同僚に言われたことはないでしょうか?
言われて初めて、自分が疲れていることに気づいて、
「(私、確かに疲れているのかも…。今日は少しゆっくり過ごそうかな。)」
といった考えを巡らせることはあると思います。
・表情や声の変化に気づき、それを率直にフィードバックすることで、クライアント自身の気づきを促す
・フィードバックによって、クライアントは自分の状態に気づき、改善や休息などの具体的な行動を考えるきっかけを得る
①Iメッセージ、YOUメッセージ
IメッセージとYOUメッセージは、相手にフィードバックを伝える際の表現方法であり、受け手に与える印象が大きく異なります。
コーチングでは、主にIメッセージを使うことで、クライアントに対して柔らかく、受け入れやすいフィードバックを行うことが推奨されます。
◆Iメッセージ
「髪を短くしましたね!私には表情が明るくなったように見えます。」
「なんだか、◯◯さん疲れているように私には見えますが、何かありましたか?」
自分の感じたことを『私(I)』を主語にして伝えるフィードバック方法です。
◆YOUメッセージ
「あなたにはやりたいことがあるはずです。」
「あなたは今、不安なのです。」
『あなた(YOU)』を主語にした断定的なフィードバック方法で、相手に価値観や考えを押し付ける印象を与えやすく、反発心を生みやすい。
・YOUメッセージの欠点:受け手に押し付け感を与え、対立を生む可能性がある。コーチングでは避けた方がよい
まとめ
コーチングの基本スキルである「聴く」「質問する」「伝える」技術は、コーチを目指していない人であっても、日常生活やビジネスシーンでの円滑なコミュニケーションを構築する上で非常に役立つスキルです。
これらの技術は、クライアントとの関係を深め、信頼を築くための基盤となります。
コーチングにおけるこれらのスキルは、相手に寄り添って本気で興味を持つという姿勢が前提です。
この姿勢は、信頼を勝ち取り、聞き上手になるために不可欠な要素であり、コミュニケーションの質を高めるための重要な鍵となります。
コーチングのスキルを身につけることで、個人やビジネスにおける対人関係が向上し、より良い結果を生み出すことができるでしょう。
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